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16-17プログラム:ジェイソン・ブラウン

SP:Jimmy Napes, Sam Smith / Writings on The Wall(映画『007 スペクター』より)

振付:ロヒーン・ワード

ヘルシンキワールドより。

YouTubeはどうやら著作権的な問題?で削除されてるようなのでニコ動で。

昨季は4回転の練習の無理がたたってNHK杯〜ワールドを欠場、ようやく治ってチームチャレンジカップには出られた、という感じのシーズンになりました。全く氷に乗らない間にしたトレーニングのおかげでジャンプやスケーティング全てにおいて強い身体になったということです。

今季は当初昨季のシークレットガーデン続行だったが、FSと雰囲気が近いとシーズン前の連盟キャンプでの相談の上、エキシ用に用意していた曲をSPにしたそうです。映画『007 スペクター』の主題歌。007シリーズのオープニングタイトルバックはいつもカッコいいです。

ジャンプ構成は3A,3F+3T/3Lz。4回転は入れない、後半ジャンプも1つだけの安全構成です。現在シニアのトップクラスでSPから4回転を跳ばない男子はジェイソンだけです。それでもFS最終グループ一歩手前の7位でした。各エレメンツの質がいいことと、そのエレメンツを繋ぐトランジションの動きへの評価が高いからです。いうまでもなく、ジェイソンは1、2を争うトランジションの鬼。演技冒頭からターンと上半身を含める身体全体を使った複雑な動きで魅せます。スペインジャッジはSPのTR(繋ぎ)に5項目中最も高い9.25をつけています。通常一番低くなるTRが一番高い選手はほかにはいないでしょう。しかし、TRを評価する際に考慮すべき点として挙げられている「難しさ」という面では、4回転がないからこそここまで濃い繋ぎを入れられるとも考えられるわけで、4回転を1種あるいは2種入れてクリーンに近い演技をした選手と比較すれば「難しさ」の点で下につけられても仕方ないでしょう。この「難しさ」が繋ぎの動きそのものの難しさなのか、それ

を入れて演技を実施することも含めての難しさなのか、この辺はジャッジによって少し解釈が違う部分があるかもしれません。

そしてどんな要素よりも観客から拍手をもらった中盤のコンボスピン。キャッチフットのポジションが実に美しい。これは全ジャッジから+3の満点をもらいました。

4回転なしの90点超えはバンクーバー五輪エヴァン・ライサチェク高橋大輔に続き3人目です。

ジェイソンぐらい身体表現で魅せられる人で初めて、飯を食える声の持ち主の歌が浮かない、作品と呼べる演技ができるんだなあと感じます。

FS:Michael Nyman / The Scent of Love(映画『ピアノ・レッスン』より)

振付:ロヒーン・ワード

GPSスケアメの演技。昨季からの続行プロ。

この曲は振付師のロヒーンが決めた。映画音楽を使うことの多いスケート選手だが意外とその映画は見たことがないという選手もいたりするけど、ジェイソンはこの映画はちゃんと見てとても好きな映画らしい。そして口のきけない主人公と重ね、言葉を使わない感情表現という面でフィギュアスケートと共通していると感じるそうです。

このスケアメで初の4T着氷。残念ながら少し回転が足りずUR判定になりましたが、4T入り見た目ノーミス演技です。演技全体の流れも素晴らしく、シーズン序盤でこの出来だったので今年こそ4回転をコンスタントに成功させて来るかと思ったのですが…実際GPSの頃のインタビューによると、今季中に4Tを固め来季は4Sを投入したいと語っていました。しかし、全米以降での試合で4回転を入れたのはワールドFSだけ。ワールドでは転倒しています。昨季は全米に出ることすらかなわなかったので、今季はどうしてもワールド代表になりたくてリスクの高い4Tは抜いたのかもしれませんが、挑戦できる四大陸でも外したのはどこか痛めたから?

4Tは1回で3Aと3Lzが2回ずつの構成。ほとんどの男子が後半ジャンプは5回にしている中ジェイソンは6回です。4回転が少ないハンデを少しでも補おうとの工夫です。

男子選手にしては柔軟性のある身体を駆使した表現を見ているとスケート以外で何か特別なレッスンをしているのかと思ったら何もしていないらしく、そこはちょっと驚きました。それであれだけのことができるのなら天性のものなんでしょう。

音楽を感じる力、それを体現する力…でも何よりも彼自身が音楽から感じたことを見ている人たちに伝えたいとの思いでいつも演技をしているんだそう。勝ちたい、とかじゃないんですね。もちろんやるからには勝ちたいでしょうけどそれはあくまで人に評価されるもの。PCSでいうところのPE(パフォーマンス)の「感情の表現・知性の表出及び投射」「個性・人柄」ってところに当てはまるのかなと。ジェイソンのそういった思いが反映された演技になっていて、観客はそれを受け止め、審査するために座っているジャッジたちも一観客として受け止めたからこその高得点になっているのだと私は感じました。

ネイサンと2人で出場したワールドで晴れて3枠を持ち帰ることができました。来季はもう1人加えた3人でオリンピックに出ることになります。その中の1人に入れるでしょうか。彼のようなスケーターもまたアスリートです。頑張ってください。