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桃太郎 67 鬼退治編

 一同が再び介したのは都で別れてから一週間過ぎた頃であった。都に入る前に約束した街道より少し離れた場所で会うと決めており、約束した場所に一同が揃った。

「桃太郎はん、見事警固役に就いたみたいやな」

「おかげさまで加茂【かも】様の口添えもあり、なんとか」

「久しいな桃太郎」

「涼様は艶やかになられましたね。何かおありになったのですか」

「すまない……皆に改めて名乗る、俺……いやわたくしは雉辰馬 涼【きたま りょう】ではなく雉辰馬 涼【きたま すず】と申す……いや申します」

「事情があるんやろし、詳しくは聞かんよ」

「俺は……いやわたくしはただ亡き父上のように領民を守れる強い者でありたかった、しかし尊敬する父上がつけた名だと、兄に諭されてな……騙すような真似をしてすまなかった」

「まあ、わても勤め柄ようやりますからな、わては気にしませんよ。お涼はんよろうしゅう」

「私も同じく気にしません。ではこれよりはお涼様とお呼びすればよろしいですか」

「ああ、なにか無図痒いが、繰り返すが騙す意図はなかったのだ……いやなかったのです。ああ今さら変えるなど何と面倒な事か」

「お涼はんそれはこちらもですわ。そんで犬はさっきからだんまりやけどどないしたん」

「拙者戌亥【いぬい】を捨て、ただの壮介となった。しかし……」

「なんや歯切れ悪いな。家名がなければ、単騎で討伐なんて言われんよ。まあ捨てる条件として鬼ヶ島に行け言う話とかか」

「ああ……そうだ。まったくお前はどこまでお見通しなのだ」

「俺……いやわたくしも同じく鬼ヶ島での討伐を条件に出されました。失敗すれば宮中で輿入れ先を見つけなければならず、言葉を直せと……」

「皆様も鬼ヶ島へ?私も守護頭【まもりかみ】の命にて鬼ヶ島へ向かう事になりました」

「以前から動きがある言う話は聞きましたけどな。そしたら桃太郎はんは警固役連中と鬼ヶ島へ行きはるんですか?」

「いえ、別動隊として先行し偵察し後に後発の部隊と合流し上陸する旨を警固守【けいごかみ】より申し付けられました」

「別動隊?二方面での挟撃やろか、せやけどそんなに割けるほどに水軍の数なかった気が、漁船でも使うんかいな?」

「先に水軍の手筈は整えていると聞いております」

「それで、出立はいつ頃になりはるんですか」

「命では明日と聞かされております」

「俺も……いやわたくしはただ鬼ヶ島討伐に参加しろとだけ聞いてい……おります」

「討伐隊の先発隊に参加しろと」

「本隊は7日後という話やから、皆、先発隊になるんか」

「本隊は7日後?」

「話によれば先発隊が街道の露払いし、合流地点で後発隊に合流し、本隊と共に上陸すると」

「理屈は通るけど、鬼の船団を突破できるとは思い難いなあ、弓士隊の大半は北伐に駆り出されてるしなあ、鬼の船団落とせるほどには手数は足りん、確かに鬼の船団は弓やのうて近接してからの戦闘やけども……まあ調べときますわ」

「お願いします」

「まかとき、じゃあ明日、隊の出前もあるからわては影より見とりますわ」

「では明日はよろしくお頼み申します」

 

 深く頭を下げる桃太郎に皆は応える。いよいよ明日一行は最大拠点と目される鬼ヶ島へと向かう。それぞれの思惑と果たさねばならない事情を抱えて、明日を迎えるのであった。