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手稲山麓バリエーション探索行 vol.6「積雪期バリエーション平坦面溶岩流の痕跡を求めての巻」

いやはや、今年念頭から雪山に向かうも、7週連続で吹雪かれて…もはや青空を忘れた「頑なに吹雪の雪山に向かう登山家」のもじょでございます。

えっとぉ…青空って、何色だったっけ?(泣

札幌市内も積雪量が目に見えて減り始め、真冬日も少なくなり、確実に春の訪れが近付いてきたようだが、山には…まだまだ、タップリの雪があり降雪は続いている。

ただ、気温上昇により、厳冬期のようなフカフカフワフワの深雪は無くなり、膝上ラッセルから解放され、湿り気を帯びた重い雪と、圧縮され固く締まった下層の雪が登坂の苦労を軽減してくれるようになってきた。

そこで、前夜…クラシックをごくごくしながら、地形図を眺め考えていたのは、厳冬期には攀じれない急斜面への取り付きだった。

以前、手稲山遺跡に初めて訪れた時、隣りの尾根が気になっていたノダ。

その尾根は…手稲山が噴火した際に流れ出した溶岩流が作り出した平坦面溶岩流の末端に当たる部分で、「発寒川」の扇状地の西側のヘリでもある。

東側に延びるなだらかな傾斜地を裾野に持つ尾根で、高度を上げると勾配を増し、「手稲山 第二峰」(通称ネオパラ山)へ繋がっている。

粘り気のある溶岩がゆっくり流れた…平坦面溶岩流によって作られた広い平坦な尾根は、立木も少なく山スキーヤー達の絶好のゲレンデになっている。

ただ、その平坦面の台地に上がるには、結構な段差を越えなければならない。

初めて手稲山遺跡から、その台地に上がった時は、崩落崖のような急斜面に取り付き、途中で…にっちもさっちもいかない状態になった失敗を犯した。

そこで、北隣の緩やかな尾根を狙ってみる事にしたノダ。

地下鉄「発寒南」から、「中洲橋」行きのバスに乗り込み、取り付き尾根の末端に近い「西野8条8丁目」で下車し、地形図を片手に住宅街を進む。

辺りを観察し、住宅街の一角に取り付けそうな場所を見つけた。

つか、フツーの民家の隣なんだが…。

除雪されて壁になった段差をよじ登って、恐らく…雪の無い時期は畑になっていそうな雪原に踏み込む。

隣り合う民家の家人が散歩でもしたのか、長靴のトレースがついている。

そこで、装具を身に付けて出発する。

しかし、冷静に考えたら…民家の裏から雪山に取り付くなんて、有り得ない状況ではないか。

こういう面白いアプローチが出来るのも、「手稲山」ならではだろう。

先ずは、送電線鉄塔がある240Pを目指す。

緩やかな斜面には、雑木林が広がっていて、住宅街の真裏なのに蝦夷雪兎や蝦夷栗鼠のアニマルトラックが沢山ある。

雪質は、いわゆる…最中雪。

昨日降った新雪が5cm程乗った下は、サンクラストした堅い層があり、その下にはザラメ状に腐った春の残雪がある。

気温は、ー2℃。

薄曇りの空から、時たま陽光が差す。

雑木林の立木の幹には、古い…ビニールテープのマーカーが付いている。

10分程で240Pに乗ると、灌木の間から「西野」の住宅街が眼下に見下ろせた。

発寒川」の扇状地として開けた「西野」の住宅街には、嘗ての河床の痕跡が幾本か窪地として残っている。

小規模だが、「発寒川」が削り取った河成段丘の跡もある。

地形や地質の勉強をし始めてから、見慣れた街の風景の見方が変わった。

新しい視点を持つというのは、面白いものだ。

同じ景色を見ても、全く見え方が違ってくるノダ。

240Pからコルに下りて行くと、北西風の通り道になっているのか、固くウインドクラストした雪面があったので、尻ボを取り出して滑ってみる。

うーん、楽しい。

残雪期の春山の如く加速する。

これは、帰り道にちょっと遊べる場所だぞぉ。

コルから、いよいよ…本格的な登坂が始まる。

このルートは、初めて手稲山遺跡に来た時に下山に使った尾根だったが、記憶が曖昧だった。

恐らく、尻ボに夢中になって景色なんか見ていなかったんだろう…な。

小さなポコを一つ乗越すと、台地状の平坦な林に乗った。

蝦夷鹿が表皮を食べて、裸になった灌木が散見出来る。

新雪の上に真新しい足跡もあった。

恐らく…前回、手稲山遺跡に行った時に出会った同じ個体の蝦夷鹿だろう。

一昨年、キノコ散策に来て大きな鹿角を拾ったが、その持ち主かも知れない。

緩やかな緩斜面の林を進むと、新しい山スキーのトレースもあった。

滑り降りてきた跡もあるから、近所のオジサンが朝の散歩代わりに滑りに来たのだろうか。

林の灌木の隙間から、目指す△496・6Pが見えてきた。

うむむむ…先週のキチガイみたいな急斜面に匹敵する急斜面だ。

ただ、背後から日差しが出始めた事で、キチガイ斜面が青空をバックに浮き上がって見え、楽しそうに見えてきたから不思議だ。

細かくジグを切って行けば問題無いだろう。

キチガイ斜面に取り付こうとした時、頭上のミズナラの幹から…カサカサという音が聞こえた。

サングラスをズリ上げて見ると、三匹の蝦夷栗鼠がアチコチ走り回って追いかけっこをしていた。

暫し立ち止まって、その様子を眺める。

枝から枝へ、幹の上から下へ、時には雪上に降りて跳ねるように、三匹は駆け回っている。

凄い運動量だな…。

きっと、小春日和の日差しを受けて、走り回りたい気分ナノだろう。

その内、一匹の蝦夷栗鼠と目が合った。

固まって、此方を凝視している。

そして、何を思ったのか…枝を伝い拙者の頭上2mぐらいの枝にやって来て、樹皮に爪を立てて乾いた音を鳴らし、拙者を威嚇し始めた。

羆に威嚇されたら、オシッコちびるぐらい…おっかないだろうが、生憎…奴らは可愛い可愛い蝦夷栗鼠ちゃんだ。

本人は大真面目で、体中の毛を逆立てて威嚇してるが、全然…怖く無い。

むしろ、愛くるしい。

開拓時代の北海道を舞台にした「ゴールデンカムイ」という漫画の中で、アイヌの少女が罠で捕まえた蝦夷栗鼠を、骨ごと叩き潰して肉団子にして食べるシーンがあったが、「肉団子にして食べちゃうぞぉ」と言うと、威勢の良かった蝦夷栗鼠ちゃんは、「ひぇぇぇぇぇぇぇ!」と言いながら逃げて行った。

さてさて、キチガイ斜面と対決だ。

胸打つような急斜面を、細かくジグを切りながら攀じる。

最中雪は解消され、湿った雪は何度か踏みつけると固まって、しっかりとしたステップが作れる。

灌木の密度も、上手い具合に…疎(まば)らで、ルート工作に支障は無い。

ただ、やはり…直登するには傾斜がきつ過ぎて、時折立ち止まって地形を観察しながら、なるべく緩やかなルートを探りながらの行程ナノで、なかなか進まない。

それでも、なんとか…40分ぐらいで、稜線の肩に乗った。

ふぅ…疲れた。

そこから先の稜線は景色が一変する。

平坦面溶岩流が作り出した…広く平坦な稜線が「ネオパラ山」に向かって続いている。

立ち枯れた蝦夷松の疎林が、広大な稜線に散らばっており、素敵な雰囲気だ。

左手前方には「手稲山」本峰が見える。

左手に視線を投げれば、「阿部山」から「峰越山」への稜線と、「百松沢山」の北峰が見える。

ただ、惜しい事に薄い雲が流れ込んできて、チラチラと雪が舞い始めた。

時刻は昼を過ぎて、腹も減ってきた。イイ感じの場所で昼飯にしよう。

広々とした稜線をルンルンしながら進む。

藪や立木に邪魔されない雪山は、地形を観察するにはもってこいだ。

平坦面溶岩流が作り出した、なだらかな稜線は、粘り気のある溶岩がゆっくりと流れた痕跡を色濃く残している。

但し、この見晴らしの良い空間は、「西野浄水場」から続く伐採用作業道(林道)が稜線まで延びているから、大規模な伐採の跡なのだろう。

今でこそ、緑が茂る「手稲山」だが、嘗ては…丸裸になるぐらい伐採作業が行われた。

手稲鉱山」の坑道用の造材として切り出されたとも言う。

アイヌ民族は「手稲山」の事を、「タンネウエンシリ」と呼んだ。

和訳としては、直訳すれば…「長い悪い山」だが、「ウエンシリ」が断崖を表す事から「長い断崖の山」という意味になるだろう。

つまり、西野や平和側から見た…平坦面溶岩流の作り出した「永峰尾根」南側の崩落崖(崖垂)を指したものだろう。

暫く進むと、雪と共に風が強まりだした。

先程まで見えていた市内眺望も隠れ、「ネオパラ」や「本峰」すらも見えなくなった。

またまた、吹雪模様ナノだ。

今シーズンは、同行山行で行った年明けの「山鳥峰」だけ晴れて、あとは…7連敗中だ。

つまり、今日の敗戦で…1勝8敗。

一軍登録を抹消され、「鎌ヶ谷」の二軍で調整に入るレベルだ(ファイターズね)。

来週は、いよいよ…イグルー山泊の予定なんだから、頼むから…吹雪かないで下さい。お願いしますっ(誰に頼んでる?)。

吹雪模様になった事で、拙者のココロは…いとも容易く、ポキッと折れた。

昼飯にしよっと。

ただ、風を避ける場所が無い稜線上ナノで、緩傾斜地にスノーブロックを「コ」の字形に1m半ほど積んで、屋根にシートを掛けた…ランチ用ビバーク掩蔽壕を作った。

今日は、時々やる…手抜き山ごはん「カレーうどん」だ。

何が手抜きかと言えば、市販のカレーライス用レトルトカレーを、うどんと一緒に煮込むだけナノだ。

但し、レトルトカレーはメーカーや商品が異なる二種類を混ぜ合わせる。

更に、キーマカレー風にスパイスで炒めた挽き肉を、ちょい足しする。

勿論、ハバネロペッパーで辛味もマシマシだ。

雪山でもハバネロパワーは健在で、ー6℃の吹雪模様なのに、額に汗が滲んだ。

1時間程のんびりして、下山に取り掛かる。

下りは勿論、尻ボ優先でルートを決める。

40分掛かりで攀じ登った…キチガイ斜面も5分も掛からす下りてしまった。

上りで見つけた…ウインドクラストした場所では、登り返して三回歓声を上げた。

取り付いた住宅街とは違う場所を狙って下山すると、ちょうど…民家の庭先で5〜6歳の、めんこい女の子と若いお父さんが橇遊びをしていた。

「こんちわ」と挨拶をして、横でスノーシューを脱いでいると、拙者のザックにくくりつけられた尻ボを、女の子が興味深そうに見ている事に気がついた。

「オジサンも、山で橇遊びしてきたんだョ〜」と笑いかけると、女の子はキョトンとした顔で拙者を見て、少しだけ笑い返してくれた。

おわり。

【写真1】溶岩流平坦面に乗ると視界が開けた

【写真2】市内眺望も素晴らしい(この直後…吹雪いた)

【写真3】昼飯用ビバーク掩蔽